Robot-Assisted Language Learning (RALL) まとめ

まずはじめにロボットを利用した英語教育を開始したのが,Robovieである[1].このロボットは小学校で英語を使って1年生と6年生の子供たちとコミュニケーションを行った.期間は18日間である.ロボットの話す文章は300パターンで,認識する単語数は50である.

ロボットは人間のパートナーになるには能力的には不十分であり,インタラクションする子供の数は徐々に減っていったと語られている.また,学習効果は,e-learningとは比較していない.

ここでの目的は,これまでになかった新しい英語学習を提案することである.普段我々は英語を使う機会がないので,英語学習の動機がない.しかし,ロボットがパートナーとして一緒に学ぶことで動機づけを行えることを示した.

その例として,ある子供は英語を学ぼうとしなかったが,ロボットに名前を呼ばれてから嬉しそうにロボットとインタラクションするようになった.また,ある子供は友達とロボットに名前を呼ばれる回数を競ったりなど,積極的にロボットに関わろうとした.これがロボットを使う効果である.

次に行われたのが,コンパニオンロボットIROBIである[2].これは韓国のYujin Roboticsにより紹介された.IROBIはPaPeRoに似た姿のロボットで,特徴はお腹の部分にタッチスクリーンを搭載し,そこに英語学習のコンテンツを表示する.つまり,通常パソコンでやっていた英語学習をロボットでやるという感じである.

実験は,本とテープを用いた学習,コンピュータによる学習,IROBIによる学習の3つを比較した.
対象は90人のこどもで,これを3グループに分けて行われた.結果は,集中度,興味,達成度の全てでIROBIが高得点を獲得した

[3]は遠隔教育用のロボットシステムである.郊外の学校に通う生徒はネイティブによる授業をうける機会が少ないためロボットを用いる.ロボットの名前は書かれていないが(おそらくTIRO),子供たちに親しまれるようにネコミミが取り付けられている.
実験は10歳から12歳のこども12人で行われた.実験前と後でアンケートを行い,興味,自信,動機に有意差が見られた.

[4]はロボットをロールプレイングに用いた例で,MeroとEngkeyというロボットを使っている.ショッピングセンターでの対話を行なっている.ロボットを使う効果として,リラックスしてできることがあげられている.24人の生徒のリスニング能力とスピーキング能力に関するテストを行い,能力の向上が示された.

[5]は,第二言語習得の為の道具としてのヒューマノイドロボットの可能性を調べたもので,学校の先生がロボットを使う際の心配事項や,ロボットの使い方についても検討している.
ロボットの利点としては,繰り返し使用できること,学習内容に合わせて調整できること,データを保存できること,好奇心を喚起すること,動きがあること,会話の練習ができること,擬人化などがある.
ここでは5つのシナリオを作って実験を行なっている.読み聞かせモード,読み上げモード,チアリーディングモード,生徒による遠隔操作モード,質疑応答モードの5つを小学5年生に対して実施している.

先生が心配した内容は,(1)ロボットが効果で,生徒が壊したりしないかどうか,(2)必ずしも学習内容には一致しないこと,(3)先進技術に懐疑的で,使うのに気が進まない,といったことなどであった.

改善点としては4つあげられており,(1)ロボットが話しているときに,あまり動かなくて失望した.(2)生徒が取り乱した,(3)いろんな役ができるように声の種類を多くすること,(4)感情が不十分,などであった.

[6]はケアレシーバ型ロボットによる英語教育で,Learning by teachingという,生徒がロボットに教えることによって学ぶというものである.普通,ロボットは先生やティーチングアシスタントとして使われるのに対して,ここではロボットはパートナーとして使われている.

以上,ここではいろいろなRALLの研究を紹介した.これ以外にもあるかもしれないが,大体は網羅できたと思う.



[1] T.Kanda, T.Hirano, D.Eaton, H.Ishiguro, Interactive Robots as Social Partners and Peer Tutors for Children: A Field Trial, HUMAN-COMPUTER INTERACTION, 2004, Volume 19, pp. 61-84.
[2] Jeonghye Han, Miheon Jo, Vicki Jones and Jun H. Jo, Comparative Study on the Educational Use of Home Robots for Children, Journal of Information Processing Systems, Vol.4, No.4, pp.159-168, December 2008
[3] Oh-Hun Kwon, Seong-Yong Koo, Young-Geun Kim, Dong-Soo Kwon, Telepresence robot system for English tutoring, IEEE Workshop on Advanced Robotics and its Social Impacts (ARSO), 2010 pp. 152-155, 2010
[4] S.Lee, H.Noh, J.Lee, K.Lee, Gary G.Lee. Cognitive effects of robot-assisted language learning on oral skills. Proceedings of the Interspeech2010 workshop on second language studies: acquisition, learning, education and technology, 2010.
[5] Chang, C.-W., Lee, J.-H., Chao, P.-Y., Wang, C.-Y., & Chen, G.-D. (2010). Exploring the Possibility of Using Humanoid Robots as Instructional Tools for Teaching a Second Language in Primary School. Educational Technology & Society, 13 (2), 13-24
[6] Fumihide Tanaka and Madhumita Ghosh.;The Implementation of Care-Receiving Robot at an English Learning School for Children.
Proceedings of 6th ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction (HRI 2011), Late-Breaking Reports (LBR)pp.265-266, Lausanne, Switzerland, March 2011.