「幼児教育現場におけるソーシャルロボット研究とその応用」のまとめ

◯研究背景
ソーシャルロボットの研究目的には2つの方向性がある。一つは人間を支援するロボット技術開発に知見をつなげようとする(工学的有用性)ことと、人間を知るための手段として用いようとする(科学的学術性)ことである。

◯問題点・目的
ロボットを用いて教育支援をしたいと思っていたものの具体的にどのような技術を用いてどのような場面を対象とするかについて判断しにくい
いかにして人間を長く引きつけることのできるロボットを作れるか

◯提案手法
(1) 保育所での探索的研究
ロボットが他の玩具とは異なる扱われ方をしたこと。子どもたちの世話欲をかきたてるようなロボットの振る舞いは、子どもたちの興味を長期間引きつける。

(2) ケアレシーバー型ロボットを用いた子どもの学習支援
RUBIと名付けられたロボットの胸部スクリーンに単語と画像提示と共に音声発話したところ、ロボットなしの場合と比べて有意に未知語獲得が促進された。
チャイルドケアロボットはケアギバー型、つまり子どもたちに何かを教えようとするものであった。これに対し、ケアレシーバー型、子どもたちが教えるタイプのロボットに着目し、教育者である親や教師が教育トピックを定めた上で、子どもたちにそのトピックをロボットに対して教えさせる。ロボットは子どもたちの自然な世話欲を引き出すよう、容易に間違えたり、不完全な振る舞いをしたりするようにデザインされている。不完全なロボットの面倒をみることにより、結果として子供たち自身もそのトピックに対する学習を深めていくことが真の狙いである。通常、散漫になりやすい子どもたちの注意や集中力をロボットへのケア意識を通じて教師が提示した学習タスクそのものに長時間引きつけることが結果的に可能であるという、教育現場にとって有益な高架も見えてきている

(3)世界の子どもたちをつなぐ遠隔操作ロボットシステム
子どもたちの教室空間を拡張し、より魅力的かつ有益な教育環境を提供しようとするものである。
近年Skypeなどの普及により、遠隔TV会話は奥の人々が比較的容易に用いることの出来る技術となった。そしてこれらの技術を用いて遠隔教育や異文化交流を行おうとする試みが各地で始まっている。一方でロボットも数多くの遠隔操作型が提案されてきた。しかし、最新技術と現実応用にはなお多くの問題があり、問題の顕在化のためには実証実験が必要である。
そこで、子どもたちが遠隔地に置いたロボットを遠隔操作することで現地の活動に実時間参加することが可能なシステムを開発した。
ターゲットタスクを遠隔地感での子ども受け渡しに設定した。物の受け渡しは教室内で最も頻繁に行われるインタラクション携帯の一つであり、教師たちもレッスン内にてこの行動を取り入れているため、これが可能になれば数多くの教室活動に参加できる。問題としては、本システムでは、インターネット上で実装しようとすると、遅延が発生する。大人であればある程度対応可能だが、子どもたちが対象であり、実際の教室活動中なので、致命的なものになりうる。
この問題を発達心理学における社会的随伴性の研究と結びつけつつ解法を模索している。社会的随伴性は人間が発達初期より有する原始的コミュニケーション能力の一つであり、自らの行動に随伴して起こる外界イベントへの注意志向と関係する
社会的随伴性が適切に実装されていれば人間は一定の遅延があってもその対象に注意を向けることが可能になると推察できる。しかし、社会的随伴性のデザインパターンは無限に存在するため、実装には実験的研究が必要である。



◯結論
ロボティクス分野において、人間とのインタラクションに関わる知見は増加している。そして人間を対象にすることによって様々な周辺分野とのつながりが生まれ、研究者の興味を集めている。こうした現状で、一般社会とのつながりを盛んなものにしていくことが重要である。社会貢献と研究推進の両面でプラスに働く可能性を秘めている。